君がいるから
* * *
――――――っ――。
(誰か……が)
――――ぉ――っ――。
(私を、呼んで……る……?)
瞼が震えるのを感じ、うっすらと開かれた隙間に光が射し込む。視点が定まらず、視界がぼやけてうまく見えない。
「おい! しっかりしろ!!」
肩を掴まれる感触があって、ゆさゆさと体が揺れる。上から声が落ちてきて、目だけをゆっくり動かしその方へと視線を移した。そこには――。
「大丈夫か?」
息を一つつき、肩から力が抜けたような姿の主は、心配気な表情で見下ろしている。
「おぅ、さま?」
渇いた唇が微かに動きながら、掠れる声で問う。
「あぁ、そうだ」
首を縦に振り肯定し、そのまま双方の瞳は逸らさすことはせず、自然と見合う形になった。
(王様――私――)
ハッと目を見開き、勢いよく上体を起こす。それと同時に鮮明に映し出されたのは、がらんとした広大な空間の中で天井を支える太い支柱。
あの空間から戻って来た――そう思ったら、安堵感と疑問に思っていたことが明確にならず現実に戻ったことへのわだかまりに、肩を使いながら深くため息を零した。
「おい」
背後から届いた声に反応を示し、上体を捻り振り向く。
「お前、何故こんな所に」
片膝を付き、その膝の上に肘を置く王様が、不思議そうに問いかけてきた。
「いや、あの、私にもよく分からなくて」
「は? お前、この場に来たことさえも覚えてないのか?」
「いえっそうじゃなくて。えっと……ここに来たのは部屋に戻る途中で迷ってしまって」
手をやたらと意味なく動かし、目を四方八方に泳がせる。
「その……剣の音が聞こえて、辿って来たらこの場所に。そしたら、王様が王様と――って、あっ!」
頭の中にあの時の光景が蘇り、王様の腕を掴んで大声を上げると、王様が驚き目を丸くさせた。