君がいるから
Ⅶ. 碧き瞳
* * *
龍の間と呼ばれる場所に、数人の男達の姿がある。その中に、腕を組みながら窓際に立ち、外を見つめる国王ジンの姿が。静寂に包まれている空間に、時折空を飛ぶ鳥達の囀(さえず)りが微かに届いては澄んだ空気に溶けていく。
「ここ数日の静かさ――奇妙だな」
どこか一点を見つめながら、そう口にするジン。彼の背後には、椅子に腰を掛けるギルスの長、アッシュ、そしてアディルの3人の姿がある。
「奴等は一体何を企んでおるのか。皆目検討もつかぬ。まさか、このシャルネイを手に入れるが為とは考え難い」
瞼を閉じたまま、ゆっくりと放たれるギルスの声音。
「盗賊による街の被害も、ここ数日報告されていません」
「…………」
アディルはジンとギルスに目を向け言い、アッシュは一言も声を発しず腕と足を組み目を閉じている。アディルの言葉を最後に誰一人口を開かず、ただひんやりと漂う冷気が4人を包み込んでいるだけだ。
「ジン」
静けさが漂う中、口を開いたのはギルスの長。ギルスの声に反応し、外を見ていた視線をそちらの方へと移すジンの瞳は厳しい。
目を閉じていたギルスの瞼がゆっくりと開かれ、その視線はジンへと注がれた。
「お主。否、お主等にも聞いてもらおうか」
そう言い放ち、今度はアッシュとアディルへと向けられる視線。ギルスの長の視線に気づいたのか、アッシュの瞼がうっすらと開き目だけを動かしギルスを見遣った。
「何だギルス。奴等のことで何か分かったことでもあるのか」
「否、そうではない」
ジンは問いかけるも、ギルスは否定の言葉を返す。
「異世界から来た少女。あきなのことについてだが――」
ガタッ!!!
ギルスの言葉の間に割って入ったのは、アディルが音を立てて椅子から勢いよく立ち上がった音。そして、ギルスへと強い眼差しを向け、テーブルを叩くように両手を着き身を乗り出すアディル。
「元の世界に帰れる方法が分かったのですか!? 老様!!」
あきなという名に過剰に反応するアディルは、ギルスの口から語られる言葉を待ちきれない様子。だが、そこへ――。