君がいるから
* * *
「山梨。ちゃんと、お父さんとも相談しなさい」
「はい。ありがとうございました」
軽くお辞儀をして担任と向かい合わせに座っていた席を立ち、出口へと向かった。
「そうだ! 山梨」
「はい」
「居眠りを許すのは今回だけだぞ」
「はい……すいません」
少し眉を下げ担任に笑顔を見せ謝罪。そのまま方向転換し職員室から出る。
「進路かぁ。全然、将来のこと考えてもなかったからなぁ」
担任の先生から、私の成績でも今からでも間に合う大学の資料を何冊か受け取ったものの、いまいちぴんと来ない。鞄からイヤホンを取り出し、ウォークマンの再生を押して曲を流し、学校に来るまでのことを思い浮かべた。
――昨夜。
どうも由香と話してる途中でうとうとし始めて、制服も着替えずに携帯を握り締めたまま眠ってたみたい。朝起きたら、制服はクシャクシャになってて、携帯の画面を見ると何件かメールが届いていて受信BOXを開いた。
From:由香
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あんたね、人の話の途中で寝るなー!
大変なのは分かるけど、あんまり無理しないように!
また学校で!
END
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由香の言葉に笑みが自然と出てしまう。その他のメールも確認し、その内の1件には父さんからのメッセージは無事着いたとのこと。その文字に1つ胸を撫で下ろす。
パタンっと携帯を閉じ時計を見ると、まだ学校に行くには早い。部屋を出て脱衣所に向かい、洗濯物を洗濯機に放り込み電源を入れた。
「よしっと!」
洗濯機が動き出し、その間に部屋中の窓を開けて、掃除機のコンセントを差し込んで音を響き渡らせる。全ての部屋の埃を吸い取り、父さんのお布団をバルコニーに出して暖かな日差しの中へ。母さんの仏壇も綺麗に拭き、キッチンも軽く磨き上げたら一休みする間もなく、洗濯機が私を呼ぶ音が鳴り響いた。