君がいるから
数日ぶりに顔を合わせたものの、相変わらずな彼女の態度にもう一つため息をつく。
「おはよう」
「フンッ」
「あのね。あなたと出来れば仲良くしたいと思ってる。だから、私が何かあなたの気に触ることしたなら、ちゃんと言ってほしいんだ」
私が気づかずに彼女を傷つけることでもしたのかと、問いかけてみた。でも、彼女は初対面時から今と変わらぬ態度だったと思いはしたけれど。
「はぁ!? 仲良くだ!?」
「うん。その為に聞かせて欲しいの」
「なら、教えてやるわよ。ぜ~んぶ!! 初めて会った時からあんたの全部が気に入らない!!」
「最初から全部って……それって――」
「誰があんたみたいな女相手に下手にでるもんかっ!! アディルの前だと弱々しい声出しちゃってさ! あぁ気持ち悪い。裏面ありそうだもんね、あんた。そんなんじゃアディルに見向きもされっこないよーだ!」
彼女は身振り手振りを加えながら捲くし立て、最後には人差し指で目下を伸ばし舌をべーっと思いっきり出す始末。
「それに、ふふっ。やめてよね~その格好でお城の中歩き回るの。他国から客人が来ることもあるのに、あんたのせいで品位を問われちゃうじゃないっ」
ちょっと待った……これ以上言わないで。
コウキに対してのと同じような感覚が、久々にこみ上げてきてしまう――。
「っていうか、本当に別の世界から来たわけ~? この間の誘拐だって自作自演とか? ただ単に貧乏でご飯が欲しいからって嘘ついてんじゃな~いの。とっとと帰ってよ」
嘘……? とっとと帰れ……?
「だいたいさ、アディルの前で猫かぶちゃってるのが1番――」
「黙って聞いてれば……言いたい放題……」
「はぁ?」
「猫かぶってんのそっちでしょ!? アディルさんの前でだけ声のトーンも違うし! それに前にも言ったけど、これは制服!! これを着て学校に行くのっ。私の世界じゃ普通! 第一、嘘付いてまで誘拐されそうになったり、どうして空から落ちなきゃいけないのよ! あなたにそこまで言われる筋合いは一切ない!!」
勢いに任せて言い放った唇と握る拳がワナワナと震え、彼女に負けじと睨みつけて続けて口が開く。
「誰も好き好んで来たわけじゃない!! 帰れって言うんだったら、あなたが私を元の世界に帰してみなさいよ!!」
朝の穏やかな空気が流れる歩廊に、私の怒鳴り散らした声が歩廊いっぱいに響き渡った。