君がいるから
私の目はジンの背中を追いかけ、窓際へと寄ったジンは腕を組んで窓外の景色に目を向けた。まるで、その話には興味がないというようにして。
ジンにとって、私の素性は別に知っても知らなくてもいい話なんだろう。彼が幾度となく伝えてきた言葉や優しさえを含んだ仕草は、ただ単に気落ちする私を気遣ってそうしてくれていたのかもしれない。それが、何故だが少し悲しく思えて、胸の奥が傷んだ。
「話はまだ、これからだ。我々、ギルス全員が口々に揃えて放った言葉がある」
細かった目元が更に細められ、ジンの背に向かい再びゆっくりと口が開かれ――。
「ヴァインと同じ波動だ――と」
「――何だとっ!?」
少しの間を空けて振り向き様に声を上げたジンは、駆けてくるような足取りでお爺さんの元へ行き着き、テーブルに力を加えて掌を叩きつけた。
「今、何と言った」
「ヴァインと同じ力を持った波動。それは我だけではなく、他のギルスも同時にそれを感じ取ったのだ」
「そんな事が、そんなものが存在するのか!?」
「ヴァインの強大な力はこの世界に二つとないものだ。我々も信じられんと最初は疑った。しかし――我々の目の前に現れたのだ」
「現れた……?」
「そうだ、現れたのだ。あきなの術が解かれ、程なくして"龍の紅き魂"が」
(龍の……紅き魂……?)
私は首を傾げそうになるくらいに、頭の中は整理はうまく整理出来ていないのに、その言葉をうまく吸収する事は不可能。周りを見回すも、ジンもアディルさんもアッシュさんも――目を見開き、まるで解きが流れを失ったかのように動きを止めていた。
「紅き魂はこう言い放った」
『この世界は闇の力に焼き尽くされ滅びるであろう。しかし、龍の血を受け継ぐ者が現れた今、全てはその者に託された。我、姿無き魂はその者の中で目覚めの時を待つ。その者の名は――』
スッと細く無数の皺と骨ばった手が上がり、人差し指が一点を指し示す――。その指す方向へと、ジン、アディルさん、アッシュさんの視線がそれを辿る先に。
「その名は――あきな。異界の地より降り立った"龍の血を受け継ぐ紅き力を持つ者"」
一体何が起きたのか、更に理解が出来ない。全ての眼差しが私に向けられ――指先が私を示しているのは何故。
今――名を呼ばれたのは一体誰?