君がいるから
Prologue
――ひ……っく……っく――
「誰かが泣いてる――どうして泣いているの?」
周りは暗い――。ただ真っ黒な闇の中に私は1人立ちつくす。
――く……ひくっ――
背後から小さな小さな泣き声がし、振り向く。先ほどまでただ闇が支配するだけだったこの空間に、突如として現れたのは。何人もの人々が真っ赤に染まり、倒れている残酷な光景が目の前に飛び込んでくる。
「なに、これっ気持ち……悪い」
あまりの光景に、口を手で押さえ吐き気を何とか堪える。折り重なるように倒れる人達の中に、1人の子供が俯き立っているのに気づく。その子供も体を真っ赤に染めていた。
「あの子だけでも助けなきゃ!!」
急いで駆け寄って肩に触れた時、ゆっくりと子供が振り返る。
「怪我してるの!? 大丈夫!?」
私の問いかけにその子の口元は――この惨劇を楽しんでいるかのように妖しく笑みを浮かべていた。