君がいるから
キーーーンッ!!
激しく鳴り響く鉄同士の衝突音。
ギギギギッ ギギッ
互いの剣が力を込めるあまり擦れ出す音が何度も繰り返されていく。
「貴様等、何が目的でここに来た」
「さぁーな。まぁ、しいて言えば一番は……」
ジンの肩越しから赤髪の青年の視線が私を射貫き、男がニヤッと口端を上げた直後、背筋に悪寒が走る。そんな私の姿を見て、喜んでいるかのように再び不気味に微笑んだ後、視線をゆっくりとジンへと戻す青年。
「あんたとは、もうちびっと遊んでいたいけどな。今日はそれが目的でないんでね」
「貴様ら盗賊はあきなが目的か!? ならば、お前等も知ってのことか」
筋が出るほどに力を込めた剣同士がぶつかり合っているのにも関わらず、2人は息が途切れることもなく言葉を交わしている。そんな中、一瞬ジンがふいをつかれ、男の剣先がジンの頬を掠めたのを目にして肝を冷やす。
「そろそろだな」
「何だとっ」
口を開けて歯を見せながら笑った青年の顔をそこにいた全員が、はたっと動きを止めた瞬間――。
ドーーーーーーーーンッ!!
「きゃーっ!!」
突然の爆音と共に大地が鳴り響き、城が大きく揺れ動く。その衝撃に耐え切れず、声を上げながら体が崩れ落ちた。
「あきなっ大丈夫か!?」
床に両手で必死にすがり付いていると、ジンは隙を見せずに青年から離れ肩を支えてくれる。
「う、ん大丈夫。ちょっと驚いただけ」
「そうか。――貴様っ!!」
私が答えると安堵した表情を浮べた後、眉間の皺を更に濃くし青年を睨み叫んだ。
「お~、こっえ~な」
青年はそう言うも、口笛を吹き怖がっている様子は微塵も感じない。そして、何故だか手に持っていた短剣を鞘に収めてしまう。
「お~いギル! もうじき出るぜ~。奴等は当分追ってはこれねーよっ」
バルコニーから慌てて駆け込んで来たのは――ボサボサの黒髪をなびかせたおじさん。
「おい、おっさん! どんだけ時間かかってんだ!!」
「お前なぁ。マジわがまま野郎だぜ~」
「まぁいい。今ごちゃごちゃ言っててもしゃーねぇ」
バンッ!!
「王!! あきな!!」
「アディルさん!!」
2人が私達を無視して言葉を交わす中、扉を乱暴に開け放って飛び込んできた人物に歓喜の声を上げる。