君がいるから


   * * *


(あぁ……また――暗い暗い、世界の中。もう、何度目なんだろう)

 どうすることも出来ない状態を、視線を落とし諦めを含んだため息を吐き膝を抱えた。こんなこと、いつまで続くんだろう――ともう一つ息を吐く。

 ――あきな――

 ふと耳に届く残響の混じった声。視界の隅から白い光が入り込み、その方へ視線を向けると。

「白い……球体。あなたは」

 再び、目前に現れた宙に浮かぶ白光の球体。ゆっくりと立ち上がり、白光の球体と同じ目線となる。

「あなたは、一体誰?」

 そう問うも、白光の球体は応えることはない。ただ、黒と静寂が支配するこの世界に灯りを照らす。

「……知りたいことだらけなの。あなたは教えてもくれないの? 私は何故ガディスに来たのか。何故、何故ってずっとずっと思ってる。それに――」

 ――龍の血を受け継ぐ者――

 残響が混じる声が突然放った言葉に、目を見開き白光の球体に再度問う。

「どうして……どうして、あなたまでその言葉を? 私は違う」

 ――ティブ――

「え?」

 ――我の名だ――

「ティブ」

 ――そうだ。これからはそう呼んでほしい――

「ありがとう、教えてくれて。ねぇ、ティブ。今、私の前に現れたってことは、あなたが知っていることを話してくれるんでしょ」

 ――あきな。汝には思い悩ませてしまっていることを心から詫びよう――

「あなたが詫びるってことは、あなたが私をこの世界に連れてきた――そういうこと?」

 ――すまない――

「謝ってほしいわけじゃない。わけもわからないまま――謝られても困るよ」

 ――あきな、これから汝に――

 ティブの続くだろう言葉が戸途絶え、まただんまりなのかと、半ば怒りが生まれた時――。眩しいほどに突如ティブから光が溢れ出し、目を開けていられる状態ではいられなくなり、きつく瞼を閉じた。


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