君がいるから


  * * *


「さっ入って」

「ありがとう」

 ウィリカが掌を上にして、自分より先にと促された場所へ足を踏み入れた。その場所、壁一面が硝子張りになっている広い空間。硝子面に沿って、腰の辺りまである高さの備え付けられた機械の前に男性3人の姿。

 ピコッピコッ ウィーン

 機械音が交じり聞こえ、その前で手を動かし操作してる様子が目に映る。そして、そのすぐ後ろ――。天井から伸びる筒状の鉄か胴か。円く縁取られたモノを手に握る背の高い男性が、大きく口を開き欠伸をする隣には赤い髪の主がいる。

「連れて来たよ」

 ウィリカが私の背に手を添え、2人の元へと軽く押し進めていく。赤髪、ギルガータの背後に辿り着き、彼はちらりと一瞬見ただけですぐに前方へ視線を移してしまう。

「雨、止んでよかったぜ」

「あぁ、まったくだ。視界が悪いとたまったもんじゃねー」

「ルカみたいにヘマすっかもしんねーもんな。ネゼク」

「誰に言ってんだよ、俺だぜ? 嵐が来ようがそんなヘマなんて万が一でもしないさ」

 そう言う男の表情は、自信満々といった感じに取れる。たしかにそうかもな――肩を並べる相手の背を軽く一つ叩くギルガータ。

「お嬢さん気分はどうだい? あれから、少しは眠れたか?」

 ふいに振り返ったネゼクさんが、私たちの存在に気づき、柔らかく笑みを浮かべ問いかけてきた。

「あ、はい。ご迷惑おかけして……すみませんでした」

 昨夜――正確には朝方に近い時間に騒がしくしてしまったこと、彼等の眠りを妨げしまった事に頭を下げ謝罪。

「そんな事、気にする必要なしだぜ。お嬢さん」

 私に向けていた視線はそう言った後、真っ直ぐに前方へ向けられた。すると、今度は赤髪がこちらを向いて、腕を組んで見せ口を開く。

「あと7、8分ってとこだ」

「え?」

「え? っじゃねーよっ。誰のせいで、この船が何処に向かってんだと思ってんだ」

 朝早くから眉間に皺を寄せ、強気な口調に少し気分が落ちる。

「シャルネイのお城……に」

「ったくよ、誰のせいでこんなめんどくせーことしてやってんだと思ってんだか」

 それはそうかもと思う反面、私を無理に連れ去らなければ――と密かに思う。


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