君がいるから
Ⅸ.銀髪
プシューッ ガッタンッ!
船が城の裏手にある茂みに着陸する。
「化け物が通り過ぎるのを待つしかないな」
「あぁ、下手に動いて目つけられちゃ敵わねぇー」
「気を抜くなよ。何処から襲ってくるかも分かんねぇーからよ」
ギルガータ達の会話が耳に届くけれど、私の視線は城の方へ向けている。私の見る先には――緑に囲まれて堂々と聳え立っていた、白を基調とした優雅な城の姿はない。城壁は割り崩れ、場内から煙が立ち上っている。
船が着陸した場所は、アディルさんが好きだと言っていたあの――庭の傍。火の粉が飛んできたのか焼け焦げ、それと共に踏み荒らされた形跡――目を奪われてしまいそうな程に咲き誇っていた花々や青々とした葉はもうそこにはない。
「あの連中……またおっ始めやがったな」
「戦が好きな連中の集まり。あーぁ関わりたくねーぜ」
「ああ。下手に手を出したら、こっちは終わりだ。今はまだ時期じゃねー」
背後から延々と聞こえてくる会話に、そっと体を振り向かせる。機械の前で座る人達と何やら言葉を交わすギルガータとネゼクさん。その表情は一段と厳しい。傍にいてくれたウィリカは、2人の元へと歩み寄って行き会話に加わった。その中に、私は当然の事ながら入ることは出来ない――再び窓外へと視線を向き直らせる。その時だった。
「ぁ……つ!!」
急激に感じる焼けるような熱さが襲い、指先から一気に全身に伝わっていく。あまりの熱さに顔が歪み、じわりと額に汗が滲みだしてくる。熱さの行方を辿って下方へ視線を落とす。
「!!」
その瞬間、目を見開く。
(呼んでる――私を)
「燃料はとりあえず足りるな」
「帰る分には問題はねぇ。それだけ確認出来れば、あとはあいつらが去ったらここをすぐに発つ」
「了解、ギル船長。あのお嬢さんには――ん?」
背筋を伸ばし、ふと動きを止め辺りを見回すネゼクに気づいたギル。
「ネゼク、どうした」
「お嬢さんは?」
「んぁ? そこにいるだろ――って」
ネゼクが辺りをもう一度見回す最中、ギル自身が指し示す場へ目を向けたが――。
「あの女、何処行きやがったー!!」
その場にいる筈のあきなの姿はない――。