君がいるから
* * *
行かなきゃ!! 行かなきゃ!!
船内の通路をドタドタと走り抜け行く。
早くっ――急がないと――!!
胸が煩く急かすように激しさを増していく動悸を抑えて、胸元で拳を固く握った――っと、突然ふらりと影が目前に。
「きゃっ!!」
「うわーっ!」
駆けた勢いのまま突っ込み、ぶつかり合った強い衝撃のあまり体がよろけ、思いっきりお尻を床に強打。
「いっ……たたたっ」
「いってー!!」
目前から声がして慌てて体を戻し見たら、頭を抱え蹲るのは――。
「シャンロ!?」
「いってて……って、お姉ちゃん?」
じんじんと痛むお尻を撫でるようにしながら、シャンロの元に膝をすって近寄る。
「ぶつかった衝撃で、後頭部床に打ったの!? 他に怪我は?」
「うん、大丈夫! 俺、石頭だからこれぐらいどってことないよ。へへっ。それよりお姉ちゃんの方こそ怪我は?」
「平気。私の不注意で、本当に本当にごめんね」
打ちつけたであろう箇所を撫で謝る。私の手をやんわりとど退かし、立ち上がったシャンロに見下ろされる。
「本当に大丈夫だって、気にしないでよ。ところでお姉ちゃん、そんなに急いで何処か行くの?」
首を傾げ問われた途端――我に返って私も慌てて立ち上がり、シャンロの肩に手を置いて目線を合わせ。
「お願い! シャンロ、教えて!」
「?」
* * *
ドッサッ!
「あーぁ……つまんないの」
シュッと剣で空を裂くように刃についた赤い液体を飛ばし、足元に転がる甲冑を身に纏った人物を平然と踏みつけながら先へと歩む。
「こんな奴ら相手じゃ退屈すぎるでしょ~。とっととアレ見つけて楽しみたいんだけどなぁ」
不服な表情で、ため息交じりに言葉にする人物が、ここに1人。
「あそこだ!! いたぞっ」
ダダダダッと突進してくる複数の足音が、すぐ背後に感じた刹那――銀の髪がさらりと揺れ動く。
ザシュッ!!
一瞬にして赤が噴き飛び、鉄を含んだ匂いが辺り一面に広がる。
「だからさぁ、君たちじゃ相手にならないし、退屈なんだって」
(あーぁ、つまんねーの)