君がいるから
「そこに誰かいるんですか……?」
そっと声を掛ける。応答はないものの、薄暗い中にぼんやりとだけ影が薄暗さに慣れてきた視界に映り込む。
「よかった……あの、もう大丈夫――」
ドーーーーーーーンッ!!!
突如響いた轟音と共に振動が起こり、その拍子に地に踏ん張ろうとした足元が揺れに負け、前へとよろけ倒れる。
「きゃーっ!!」
体が床に強打しそうになったのを、条件反射で両手がそれを防いだ。パラパラと上方から天井の欠片が降って自分の体に落ち、咄嗟に頭を両手で防ぐ。揺れは、ほんのわずかな間だけですぐにおさまり、ゆっくりと体を起こして揺れが完全におさまったことを確認し、胸を撫で下ろす。
「ふぅ……よかった。おさま――」
様子を窺うように辺りをゆっくりと見回し、そしてある一点の方向を見た瞬間――目を見開く。そこには。
私のすぐ側らで壁に体を預け、上を仰ぎ苦し気な息遣いをしている人の姿が。
「あの……」
恐る恐る声を掛けながら、その人の元へと歩み寄った。
「ハァハァハァッ……くっ……そ」
「あの……大丈夫ですか。何処か怪我――具合でも悪いんですか」
互いの距離を縮めて傍に寄り着き、そっと肩に左手を置こうとした私の手は寸前で止まった。
「!!!」
より近づいてはっきりと確認出来た人物の容姿に、驚きの声を上げてしまう。
「レイ!?」
どうして、こんな場所にレイ1人で!?
こんな薄暗い部屋の中から、私の目の前に現れたのは紛れもなくジンの弟――レイ。思いがけず出会った人物にただ驚くばかり。けれど、あの涼しい表情だったレイの様子がおかしい。
「レイ?」
「ハァッハァッハァッ……」
私の問いかけに何も反応を見せず、ただ呼吸を荒く吸い込んでは吐き出す。異常な程の息遣いに異変を感じ、更に体を寄せ腕に触れて声を掛ける。
「レイ、聞こえてる?」
「ハァハァ……ぁ……っ」
「レイ!」
「……ハァ、ハッ」
先ほどよりも声が擦れ、目が大きく見開かれていく。触れたレイの体は小刻みに震え出し、触れた薄手のシャツはじんわりと湿っていた。ふいにレイの手に触れたら、酷く冷たい。