君がいるから
「レイ! レイ!」
頬を軽く叩きながら、仰ぎ見ている彼を呼びかける。額から流れ落ちる汗――息苦しそうな呼吸音、何かに酷く脅えてるかのような震え。一体レイの身に何が起こってるのか、私には何も分からない。
「私の声、聞こえてる!?」
「……て、も……れ」
「レイ!? ねぇ、こっちを見て!! お願い、レイっ」
触れていた腕を揺さぶり、力いっぱいレイの名を呼んだ。すると、震えが少し治まり、上方を向いていた視線がそっと下りてくる。
「大丈夫……落ち着いて」
力無く壁に寄りかかり、そのまま下に崩れ落ちそうなくらいにぐったりとしているレイ。私と同じ目線の高さで、か細くて息苦しそうなレイの息遣いがさっきよりも近くで聞こえる。
「もう大丈夫だから、一緒にいるから安心して。ね?」
再びレイへと声を掛けようとした瞬間だった――。
ドーーーーーーンッ!!
再び鼓膜が破れるかのような轟音が聞こえたと同時に――地響きが襲ってくる。そして、突風と共に細かい砂埃が瞬く間に舞い上がり、私達を覆い尽くす。
「ゲホッ……コホッコホッ!」
砂埃が息を吸う度に、肺に入ってきて苦しく咳き込む。突然、襲ってきた轟音と地響きで瞑った瞼をそっと開けると、そのまま視線を下げた。すると、ついさっきまで薄暗くて、はっきりと見えなかったレイの表情が。振り返って辺りを見渡すと、薄暗かったこの部屋に明かりが差し込んでいた。正確には太陽の光とまでは言えない明るさ。
まだ砂埃が舞う中、その明かりを辿って視線を上げ驚愕する。視線の先、天井には大きく口を開けていたから。
その穴の縁からは、まだパラパラと瓦礫が落ちてきている。上から視線を下へ、行き着いた視線の先。目の前の光景に、背筋が震え唾を飲み込む。一歩間違えば私達は巻き込まれていた。そう思える程の巨大な穴が現れ、恐怖が襲いじわりと掌が汗ばんでいく。
「……んっ……うぅ」
下方から呻く声が届き、視線をその方へと慌てて向き直った。