君がいるから
扉までそれ程距離はないけれど、レイの体を気遣いながら歩く速度だと少し遠くに感じてしまう。
「ここ足元、気をつけてね」
何とか扉の前まで辿り着き、壊された扉の破片などが足元を邪魔してる為、壁側に寄りかからせたレイに手を差し伸べ、2人で部屋から抜け出て通路を左右見渡す。
「どこかに安全で、レイが休める場所……」
辺りを見回し考えてみるも、私はこの城の内部をよく知るはずもなく、城の人達が避難する場所さえも分かるわけがなかった。
(早く――伝えなきゃいけないことがある)
少しずつ焦りの気持ちが出始めてきてしまう。1人でどっちに行けばいいかと悩んでいる時――視界の隅でレイの体が揺れ膝から崩れ落ちていくのに気づき、地面に転倒する寸前でレイの体を受け止める。レイは膝を地面に着けた状態で、ぐったりと私の肩に顔を埋めている体勢に。
「大丈夫!? ねぇレイ、お願いだから、返事してっ」
さっきは応えてくれた筈の呼びかけに、ぴくりとも動かない。
(どうしてこんなに……やっぱり何処か怪我してるんじゃっ。でも、そんな傷痕らしきものは、確認出来ないのに。何故――?)
「レイ!! しっかりして、レイ!?」
「……うっ……ん」
私の声に微かに反応したレイの背を叩き、何度も呼びかける。
「レイ! お願いだから……誰か……誰かに助け――」
「あっれ~? こんな所に女がいる~」
(――え?)
背後から突如聞こえてきた声に、肩を震わせ恐る恐る振り向き視線を上げた、その先に。銀髪、銀の瞳。
「何、お楽しみ中なの――ってんなわけないって感じだなぁ。でも、まぁ、僕には関係ないことか~」
(どうして――)
「目当てのモノはまだ見つからないのに~さぁ。どうしてこう……つまんない相手にばっか当たるかなぁ~」
(どうして――この人が口を開く度に、身の毛がよだつような感覚に襲われるの)
レイの体を支える手も微かに震え出し、それがレイに伝わらないよう固く拳を握る。
「あなた……誰……」
「ん?」
私が緊張のあまり震える声でそう問うと、目前の人物の口元がゆるり――上がっていく。