君がいるから
綺麗な赤い瞳――今まで見たことないくらい綺麗で端正な顔立ち。腰まで伸びた長い金の髪、鼻も高い。
体には防具のようなのを、胸、胴、膝に身に着けて、その下には赤い布地の服に白のパンツを身に着けている。
身長も高く、見上げないと顔が見れない。私と比べて30センチ以上も違う気がする。
さっきは緊張と恐さで視線が合ったとしても、顔をまじまじと見るなんてなかったし、はっきりとその顔を見て平凡な私とは比べものにならないくらい。
「アディル」
自分の足元を見つめていた視線を、ふいに上げる。
「名前はアディル=リウィンです」
「アディル……さん」
アディルさんっていうんだ……やっぱり外人さんなのだろうか。
「アディルで結構ですよ。あなたのお名前も教えて頂けますか? 私もあなたの名前が知りたいです」
「――山梨あきなって言います」
私の名前を聞いて、少し困っているようなアディルさんに首を傾げる。何を困ってるんだろう――変なことでも言ったのかと不安が過る。
「あの?」
「ヤマナシ――とお呼びすれば、よろしんでしょうか?」
どっちが名前か迷っていたのかと、両手を振る。
「……そっちではなくて、あきなの方でお願いします」
「あきなか、承知しました」
再び微笑むアディルさん。私もアディルさんの笑顔につられて自然に微笑むことが出来た。
「あきなさん。ソファーに座ってて下さい」
「アディルさん。私はあきなで構わないです」
すると、頭をクシャッてふいに撫でられ髪が少し乱れる。
「承知しました、あきな。少し待っていて下さい。温かい飲み物をお持ちしますから、そこで休んでいて下さい」
そう言い終えると、アディルさんは扉の外へと出て行ってしまった――。
* * *
しばらく扉を見つめ続け、触られた頭を自分の手でも触ってみる。
(すごく優しい人だなぁ)
緩んだ頬はすぐに固くなり、まだ持ったままだった鞄を高級感溢れるアンティークのソファーに置く。そして窓に向かい、硝子越しに見える景色を眺めた。
「どこか知らない外国なのかな。でも日本語は不思議と通じてる。それにしても、どうして月が……」
未だに輝きを放ち続け、先程と変わらない大きさで見える月に疑問を抱く。それにまだ夜にもなってないのにも関わらず、こんなにも存在感のある月を目にするのは初めてだ。
時折、風が吹いては窓に当たる音だけが響く。