君がいるから
キルカンショク? サイアク? コノヒトナニヲイッテルノ――?
「あの爺さん達ってさ。この国の魔導士でしょ? ガディス一と称えられてる魔導士って言ってもさぁ」
(魔導士って……まさか……)
銀髪は手にしている剣の刃を顔の位置まで上げ、上下に手首を動かし刃を舐めるように見る。
「大したことなかったなぁ~」
「お前。ギルス達に何をした!?」
ジンはさっきよりも険しい表情となり、銀髪へ向かって言い叫ぶ。
「え~何って? これ以上言わないと分からないの? ん~でもどうしよっかなぁ~」
「ふざけるなっ! 答えろっ! ギルス達に一体何をした!?」
銀髪はジンの怒気を帯びた顔つきを見るや、クックックッと喉を鳴らし笑う。
「男――ましてや老人のさぁ~。そんな奴らの断末魔はやっぱし気持ち悪かった~」
嘲笑う銀髪の言葉がうまく整理出来ない。ガクガクと膝が震え出し、頭の中が真っ白で、その先は何も考えられない。考えたくもない――頭を左右に振る。ジンも目を見開いたままその場で動きを止め、徐々に顔を俯かせていく。
「でもさでもさ、真っ白な髪が僕が好きな綺麗な赤に染まっていくのはさ、ゾクゾクしちゃったよ~はははっ」
「――な……が、ぉか……ぃ」
「はははっ。あぁ、でもさぁ? 簡単すぎてつまんなくってさ~。あれでガディスで一番なんて言われてたら、他の魔導士に失礼じゃん」
「……う、な」
「可笑しくって、こんな楽しくてしょうがないよ……くくくっ、あっははははは!!」
(人を斬った事の何がそんなにおかしいの。この人狂ってる)
唇を舌でねっとりと舐め回して、その瞬間を思い出している様子の銀髪の瞳は、うっとりとして快い気分に浸っている様。彼の甲高い笑い声が、嫌なほどに耳に付いてくる。
「……う……な……」
「っはははっはははは」
剣の柄を持つジンの拳の震えたのを目にして、それが次第に大きくなっていることに気づく。
「ジ……ン――?」
私の視線の先にいる人物の名を呼んだ、その時黒い剣から異様な雰囲気を感じ取る。ジンの剣を凝視して、その様子を見続け――。
「何!?」
(黒い剣から煙――ううん、違う。煙じゃない)