君がいるから
「うぅっ……っ」
耳に届いた苦しそうな声音、私達は一緒にその方へ視線を移す。私達の傍らで横たわるジンが体を震わせながら、うっすらと瞼を開く所だった。
「ジン!」
「王っ!!」
2人の声が重なり、同時にジンの傍へと近づき、私はジンの手を取り包む。
「ジン、よかった……。目が覚めて、本当によかった」
「うっ……ぁ……き」
うっすらと開かれた瞳が私を捉えながら、か細い声のジンに言葉で返す代わりに、きゅっとジンの手を握り口端を上げて頷き、一先ず胸を撫で下ろす。でも、ジンの顔色はすごく青白く、酷く疲労しているようで、見るからに元のジンではないことは確か。
「王、起き上がれますか?」
「……ァ、ディ、ぁ……いつは」
「奴等は全て退きました、心配いりません」
「……そ、うか……」
アディルさんの言葉に、瞼を閉じ息を吐くジンの動きはとてもゆっくりとした動作。
「……王、お体は」
「へ……いき、だ。少し……体が、だる、いだけ……だ」
そう言うや否や、無理に起き上がろうとするジンの姿に、アディルさんと私は同時に手を伸ばす。ジンの体を2人で支え、ゆっくりと体を起こす。動かす度、顔を歪ませ時折、苦痛に耐えるような声がジンの口から漏れる。
見る限り、どこも怪我してる様子はないのに――何故。そうして頭を過った――たった一つ、気にかかる事。
「ねぇ、ジン。喋るの辛いかもしれないけど、1つだけ聞きたいことあるの」
「……な、ん、だ」
「あの、銀髪の人と――その時のことなんだけど」
「ぎ……んぱ……つ?」
目を閉じ、微かに首を傾げるジンの様子に、もしやともう一度口を開く。
「もしかして――覚えてないの?」
「……お、前。何……言って」
「銀髪の人とジンは闘ってたの。でも、その時のジンは何だか……いつものジンじゃなくて、異様な雰囲気で、それで」
「ぎ……んぱ、つ……ぎん――」
呟くように何度も繰り返すジンは、頭を抑えるようにして掌を添えた。思い出そうとしているのか、指先に力が込められていく。
「……ぅあ″っ!!」
「ジン!?」