君がいるから
* * *
「きゃっ!!」
きっと開けるのに相当な力がいると思って、走ってる勢いでそのまま突進したのはいいけれど。案外すんなり開いてしまったことに驚くと同時に、勢い付いたものは止めることが出来なくて、そのまま突っ込む形で体を硬い床に強打してしまう。
「いった……い」
床が大理石のような石で出来ているから擦り傷なんてないけれど、打ち付けた全部に鈍い痛みがじわじわと襲ってくる。擦りながら、ゆっくり起き上がったと同時に――。
ドンドン!!! ドンドンドン!!!
すぐさま、背後から激しく扉を叩く音に振り向く。外側から私を追ってきた人数が想像出来ないくらい、途切れることなく扉が叩かれる音に体が震え抱く。
(とにかく何処かに隠れなきゃ)
まだ鈍い痛みがある体を必死に立ち上がらせた。そして後ろを振り向いた時――。
「そこにいるのは、誰だ」
警戒する声音を追って見遣った先に、何メートルもある長いテーブル、その脇には白い髪に髭、RPGゲームに出てくる魔導士のような白い装束の7人のお爺さん達の姿がそこにある。
そのお爺さん達が、座っている椅子の背もたれが座高よりも遥かに高い。お爺さん達は怪訝な表情を浮かべ、私を見つめながら耳打ちをしている。
「誰だと聞いている。答えぬか」
「…………」
私は首を数回かぶりを横に振る。そして、周りをゆっくりと視線だけを動かすと、ちょうど私の真正面のテーブルの先に座っているお爺さんを見た時だった。
「っ!」
はっと息が出来なくなる感覚と、大きく目を見開く。遠くからでも分かってしまった。
あの男が――お爺さんの隣に立っているんだと。
息が苦しくなる程、心臓の鼓動が急激に早くなり、ギュッと両手で胸を押さえた時、目が合ってしまった。
「逃げなきゃ……」
呟いたと同時に、男がこちらに足を向け歩いてくる。
そう思ったら、再び扉の握りに手を掛け引き開く。外にはどれ程の人数がいるのか分からないのにも関わらず地を蹴った――。