君がいるから
――数分後。
開かれた扉からアディルさんが袋を持って戻り、そうして私の目の前に差し出した。
「あきな、これを当てておくと瞼の熱も下がるよ」
「わざわざ、ありがとうございます」
差し出された袋を受け取ると、水が入ってる感触と硬いものが擦れ合う音――氷水を作ってきてくれたんだと、察する。アディルさんは先ほどまで座っていた場所に座り直し、たぶん、冷えてしまってるだろうお茶に口をつける。アディルさんへ向けていた視線を、ひんやり冷たい袋へと移す。
「アディルさん」
「ん? 他にも必要なものがある? 言ってくれれば、すぐに用意するよ」
私を気遣う声音と共に、ティーカップを置く音がたち、私は視線をとしたまま頭(かぶり)を左右にふり、ためらいがちに口を開く。
「……ごめ……んなさい」
「どうして、あきなが謝るの?」
「迷惑をたくさんかけて……さっきもアディルさんが悪いわけでは無いのに、責めるような言い方を……本当にごめんなさい……」
ずっと優しい笑顔も言葉もかけてくれていたのに、大声を上げてしまったことを後悔して頭を下げ謝る。本当は鼻赤いし瞼は腫れているし、こんな面を見せてしまうのが恥ずかしい思いもあり、顔を俯かせたまま――。
「そーいえば、あきなは何歳なの?」
ふいに問いかえられた投げ掛けられた言葉に、つい顔を上げてしまった。
「17、8かな? 俺の予想だと。違った?」
「あ……いえ。17歳、高3です。どうして、わかったんですか?」
私の問いにアディルさんはにっこり笑む。
「当たりだね。女の子のことなら何でもわかるよ。例えばあきなのスリーサイズとか。上か――」
「それ以上、言わなくていいです!!」
にっこり眩しいくらいの満面の笑みで、私のスリーサイズなんて言おうとするものだから、立ち上がって思いっきりそれを防ぐ。
「何だ、残念。正解が知りたかったのに」
(ちょっと…キャラがさっきまでと違うような?)
アディルさんはくすりっと口端を上げ、カップとポットをトレーに乗せて立ち上がった。