君がいるから
* * *
「その後はね、友達が出したパスに気づかずに、自分のここにボールが思いっきり当たって試合終了」
話す間中、一言も発さないジンに向かって、自分のこめかみを指して空笑う。
「チームメイトからは――まだ終わってもいないのに、勝手に終わった気になってた事を咎められた。皆泣いてて……」
途端にあの子の顔が思い浮かぶ。悔しげに歪めた顔と、私を軽蔑する目。そっと瞼を閉じて、ゆっくりと薄開く。
『あんたなんか、いらない。このチームに必要のない存在だから、もう二度とコートに戻ってくるな!!』
『謝罪の言葉もないの!? 今すぐ消えろ!! 消えてよ!!』
そう吐き捨てて、その子は友達に支えられながら涙を流し続けてた。謝罪もせずに、それを私は黙って見てるしかなかった。
「私はその時、思ったの。母さんがいない寂しさを紛らわせる為にあの場所に拘って居座り続けてた、卑怯でずる賢い人間だったんだって。ずっと人に媚びて、人を傷つけて、自分のせいなのにそれを認めなくて、謝罪の言葉さえ言えない、ずるい人間で」
「あきな」
「それだけじゃない。初めから何処かで見下してたんだ、彼女達を。自分がスタメンやレギュラーに選ばれるのは、彼女達には才能や実力がないんだって。だから、彼女は私を目の敵にしたんだって」
「……やめろ」
「そんな私の思ってることを彼女は最初から気づいてて、許せなかったんだと思う。だから私はきっとひつ――」
「それ以上言うな!!」
腕に圧迫感が襲ったと同時に勢いよく腕を引かれ、視線を上げた先には力強い漆黒の瞳。眉根を寄せて厳しい顔つき。途端に、ジンにとってはつまらない話で、気分を悪くさせてしまったと今更ながら気づく。
「ジンには関係のない話だったのに、勝手にベラベラと喋っちゃってたね……」
「それが、いけないんじゃないのか」
「……え?」
「自分は大丈夫だとまるで呪文のように唱え自己満足し、そうやって自分勝手に人の想いを決めつけるな」
「ジ、ン……?」