君がいるから
Ⅲ.漆黒
チュン チュン
「ん……」
鳥達の囀り――瞼を擦りながら、うっすら目を瞼を開く。
「ふぁー」
気怠く体を起こし、て暫く座ったままの状態。鳥の囀りと、時折、風が窓に当たる音が耳に入ってきて、段々と鮮明に映し出されていく光景に、徐々に目が見開いていき――。
「あーっしまった! 朝ごはん! 今、何時!?」
髪をクシャクシャ掻き回しながら大声を上げ、ベットから出て時計を探すも、そこでふと気づく。自室には決してないであろう高価な家具に。しばらく寝ぼけた鈍い脳内を巡らせる。
そして、漸く思い出されていく昨日の出来事――。
「そうだ。ここ、家じゃなかった……んだった」
誰もいない広い部屋で1人呟き、窓の外を仰ぎ見る。視線の先には、昨夜飽きずに見ていたあの大きな月が、空は青色に染まっているというのに強い輝きを放っていた。普通、朝や昼は白く見える月が、青い空に何とも不似合いな赤がかったオレンジ色の光。
「本当に不思議」
漸くベットに入り瞼を閉じたのは、昨夜――というよりも空が白み始めた頃だった。窓に近づき、そっと硝子戸を開ける。すると、気持ちのいい風が頬を撫で、カーテンを揺らし流れ込む――。
『洗濯物よく乾きそうだなぁ』なんて、のん気に習慣づいた事を思う。
コンコンッ
扉をノックする音が聞こえ『はい!』っと声を大にして言う。
「あきな。アディルだけど、入っても平気かな?」
アディルさんの声が届き、慌てて身なりと髪を整え、急いで扉の前に向かい返事の代わりにそっと開けた。
「おはよう。突然、お邪魔しちゃってごめんね。もしかして、無理に起こしちゃったかな?」
にっこり笑むアディルさんの表情は、朝からとても眩しく感じられる。
「あきな?」
「っ! おはようございます!」
呆然とアディルさんの端整な顔を凝視していたから、声を掛けられ慌てすぎて、自分が思っていたよりも声が大きくなってしまった。気づき、口を慌てて押さえ、恥ずかしさから顔が熱くなる。そして、チラッとアディルさんを見遣った。
「くすっ、おはよう。うん、元気そうでよかった。顔色も良いね」
笑みを浮かべ大きな掌が私の頬を包んで、親指が小さく肌を撫でた行為に胸が高鳴り、体温が一気に上昇し始めてしまう。起きたてから、とても刺激が強すぎた。