君がいるから
「……お前」
私を見下ろす漆黒の瞳に引き込まれ、互いの視線が交わる。
「王。この子が、例の異世界から来た少女です」
横方から優しい声音のアディルさんが、目前の男にそう言葉にした。
(……お……う?)
私は驚いてアディルさんを見遣ると、アディルさんは微笑んでいる。
「あきな。この方が我が国の王、ジン=ルード=シャルネイ様だ」
王と呼ばれた男に再び視線を戻すと、彼はじっと私に漆黒の瞳を向けていた。途端に私は気づき、慌ててお辞儀をする。
「やっ山梨……あ……あきなです」
昨日、対面はしているものの、改めて王様として顔を合わせたからなのか、緊張して自分の名前でさえも途切れ途切れになってしまった。そして未だ、下げた頭をなかなか上げられずにいたら、頭上から彼の声が落ちる。
「変わった名だな」
その一言で顔を上げたら、彼は私の傍から離れてあの老人達の元へと歩んでいくところだった。自分の所定の位置なのか、ある椅子に腰を下ろした。そして彼は背もたれに体を預ける。
「さぁ、続きを話そうか」
静かに低い声がそう告げ、今までの空気がピリッと張り詰めたように感じ、私はその声と周りの雰囲気に体が一瞬震えるのを感じた。
「異世界か……」
椅子に深く座ったまま、横目で視線を送ってくる王様。周りを見渡すと、老人達も目を閉じたまま、腕を組み何かを考えている姿勢。この場にいる大数は信じられないと首を振り顔をしかめる。
私は昨日アディルさんに話したままを、ゆっくり自分の口から話した。所々、緊張が交じって自分でも何を言っているんだか分からなくなってしまったけど、アディルさんが助けてくれて何とか話を終えることが出来た。
「あの、おっ王様……」
静まりかえっているこの状況の中、私は口を開いた。