君がいるから
* * *
「うわーすごい量」
まず連れて行かれたのは図書室、というより図書館と思える程、天井の上まである本棚があり、一回転してもやはり周りは本棚だらけ。その中にきちんと整理されて、ビッシリ詰まった本の数々。本の独特なにおいが部屋中に広がっている。しかも、この部屋の天井の高さと、広さも一体何畳あるのかと驚くばかり。
ふと、高い高い天井を仰いだら、何か絵のようなのが描いてあるのに気づく。けれど、見ようとしても見れるわけがなく――。天井が高すぎるのと本棚のせいで、窓も電気もあるのに薄暗く感じる。
どうしても気になって、思いっきり見上げ届くはずもないのに、背伸びまでして目を凝らし見る。
「りゅ……う……? でも、あれ、ちょっと違う感じ」
色は褪せていてはっきりとは分からないけれど、何かを守るように体を丸めているのは分かった。それは、とても大切に優しく抱きしめるみたいに。ただの絵のはずなのに……私はその絵から目が離せない。
「あきな? そんなに上ばかり向いてると、首が痛くなるよ」
ぽんっと肩に手を置かれて話かけられても、私は上を向くことを止めなかった。ううん、何故だか逸らしてはいけないと思った。この絵の龍が話しかけてくるようで――今にも優雅に宙を舞う気がして、触れもしないのに……手を伸ばす――。
「キャ!!」
突然、視界が遮られ暗くなり声を上げる。そして、目元にある温かなものが離れると、光が瞼を通して入り込む。目をぱちりと開けて、肩越しに後ろへと視線を流す。
「アディルさん!? 急に目隠ししないで下さいっ。驚きましたよ……」
私が眉間に皺を寄せながら、頬を膨らませ言う。
「何度も呼んだのに返事をしてくれなかったのは、あきなだよ?」
「……呼びました?」
「何度もね。何をそんなに熱心に見ていたの?」
腕を組みながら首を傾げて、不思議そうに聞くアディルさん。私はその事を思い出して、人差し指を向けて再び天井を仰いだ。