君がいるから
視線の先には――母さんの形見の指輪が赤い光を放っていた。正確には指輪にはめ込まれている、小さな赤い石。微弱な光を放ちながら、淡い赤い光から濃い赤へと次第に変わっていく。
「あ……ついっ」
色が濃くなっていくのと同時に、熱さが増していく。その熱さゆえに全身が汗ばみ、顔が酷く歪む。熱さに耐え切れなくなっていき、指輪を外そうと試みようともう片方の手を指輪へ触れよう――その時。
「きゃっ!!」
小さな石から、突如として強く大きな光が放たれ、私はその眩しさに目を硬く瞑った――。
(…………)
(……龍……た)
頭に直接語りかけてくる声に、そっと目を開く。
「え……?」
目の前に広がっていたのは、さっきまでいた部屋ではなく――ただ真っ暗な闇が支配している場所だった。見回してもただ闇が広がり続けているだけ。体が途端に震え、それを抑えるように両腕を絡ませて、自分を抱きしめ座り込んだ。
「やだ……怖い……。ここ、嫌……ここにいたくない」
小さな子供のように、途切れ途切れに呟くが、全て闇に溶け消える。
(……龍は……蘇った……)
再び聞こえたさっきの声に反応し、辺りを全て見回した。
「誰!? どこにいるの!?」
(龍は蘇った)
「龍って、何のこと!? 教えて、あなたは一体誰!? 私がガディスに来た意味をあなたは知っているの!?」
(蘇ったのだ――)
「お願いだから何か知っているなら――っつ!!」
私の声が暗い空間に響き渡り消えたその瞬間、指先に感じる熱に顔を歪み始める。
(既に終えた……時は満ちた――)
姿も見えない、その声の主は幾度となく同じ言葉を紡んだがだんだんと小さくなっていく――。声の主に叫びたい衝動に駆られたけれど、あまりの熱さに耐えるのに必死で言葉は声となって現れてくれない。
そして、またあの赤い光に全て包み込まれ、視界は黒から赤に一気に染められて私はそこで意識を手放した――。
(さぁ……再び――)