君がいるから
* * *
「はぁ……おっ重い」
疲れきったため息を吐き出し、とぼとぼと地道に家路を歩いている途中。両手にはどっさり買い物袋をぶら下げ、肩から鞄がずり落ちてしまいそう。それを何度も直しながら、一歩一歩地道に自宅を目指す。
いつもの帰り道に通る広場に差し掛かり、足を止め見ると広場に備え付けているゴールを使ってバスケを楽しんでいる中学生ぐらいの男の子達が遊んでいた。けらけらと笑う辺りに響く声、その光景に自然と頬が緩む。
「楽しそうだな……」
『媚び売る女って最っ低!!』
『練習もしてないあんたが、何でレギュラーなの!?』
『情けで出してもらって、恥ずかしくないわけ?』
『あんたのせいで……負けたんだから』
『秋山とベタベタすんのも、やめてくれる!? 彼女でもないくせにっ』
『本当、男が傍にいないと生きていけないタイプなんだね。これからもそうやって生きてけば!?』
――中学時代、そう罵った彼女達の表情は蔑むような目。
昔の記憶が過ぎり、笑顔が一気に冷めその場に立ち竦む。ギュッと瞼を固く瞑って、頭を軽く横に振って掻き消す。
「私にはやる資格なんて、これっぽっちもない」
自分で自分に言い聞かせ、再び足を前へ動かし広場から離れ家路を急ぐ。ふいにブレザーのポケットに入れた携帯を何とか取り出し、時間を確認する。
「うわっやばい! もう、そろそろ帰ってきちゃう!」
スーパーの特売日ということもあって、恐らく年齢が30以上離れた主婦の方々と体を押し合いながら、何とか手に入れた目的のカルビ。その後も必要なものをどんどんカゴに入れたらいつの間にか大量の荷物に――。しかも、レジに並ぶ人たちも半端ない人数で買い終えるのに、1時間近くかかってしまった。
(まぁ……元はといえば、私が居眠りしてたのがいけない)
走りたい気持ちはあるけれど、さすがにこの荷物では歩くことさえ億劫なのに、それは無理だと全身が訴える。
(憎いぞ……特売品カルビ……と野菜たちと雑貨たち。でも仕方ない――今日は久々に家族で食卓を囲めるんだから)
よしっと1つ気合を入れたものの、すぐにその心は折れてよろけながらも再び地道に歩き始めた。