君がいるから
王様の視線が扉へと向けられ、不思議に思いながら私もその視線を追って向けたと同時に――。
ドタ ドタ ドタッ
扉の外から複数の――恐らく足音――が聞こえ始め、今度は何が起こるのかと無意識に体を身構えながら後方へと数歩下がる。
バンッ
力強く扉が開かれ、薄暗かった部屋に外からの明かりが漏れ入ってくる。そして扉が開いた先に、大人数の甲冑を着けた人達、その中を掻き分けて私達の傍へと駆け寄ってくるのは――。
「王!! っと――あきな!?」
「アディルさん!!」
金の長い髪を揺らし、水色の襟縁に深い青の服と甲冑を身に纏ったアディルさん……とその背後から――。
「何故、ここにお前が――」
私の姿を目にすると、厳しい面持ちと鋭い視線で詰め寄って来るアッシュさんをアディルさんが手で制止させた。
「どうやってここに来たの? それに部屋の外には俺の部下がいたはず」
「……それが、私にもどうしてこんな事になったのか」
心配と少し焦りが含まれた表情のアディルさんを見て、私は俯きながら答えた。
「アディル、その話は後だ――っつ……」
私とアディルさんの間に割って入ってきたのは王様。けれど、腹部を抑えふらついた足の代わりに剣で自身を支えている。私よりも早くアディルさんが傍へ駆け寄る。
「王! 何処かお怪我でも!?」
「案ずるな……こんな痛み、すぐに引く」
「ジン。何があった」
顔を上げると、いつの間にかギルスさんが姿があった。
「儀式の最中、お前は赤い光に包まれ消えた。――かと思えば、ここにいるのは何故だ」
「俺にも分からない。気付いたらここにいた。そして、あいつがいた」
王様は厳しい面持ちで拳を握り、眉間に皺が濃く刻まれる。
「あいつとは――まさかっ」
「あぁ、シュヴァルツ・G・ルゴラだ」
「まさか、この場所に入れるまで力を既に手に入れたということか――」
王様の言葉にギルスさん――アッシュさん、アディルさんも動揺した表情を浮かべている。腹部の痛みに歪ませていた表情を王様は消し、口を開く。
「再び襲撃してくる可能性もある! 総員直ちに各自の持ち場に着け!!」
「「はっ!」」
扉の外側にいた人達が王様の言葉で胸を張り姿勢を正し、その場から一斉に駆け去って行く。
「お前達2人も警備にあたってくれ」
アッシュさんは王様の言葉に頷き、もう一度私に冷酷な瞳を向け、この場を後にした――けれど。
「アディル」
「……了解……しました」
今度はアディルさんの紅の瞳が私を横目に見て、王様に一礼をしてアディルさんもまたこの場を後にした。