君がいるから
そこには、腰に手を当てて少し鼻息を荒くし、仁王立ちしている女の子の姿が。
「アディルはあたしのなの!! もう二度と近づかないで!!!」
「……え、いや……あの」
「いい!? もう一度言う、金輪際近づくな!! アディルに手を出したら、ただじゃおかないから!!」
さっきと同じように睨みながら、人差し指で私を指し示しながら続けて言い放つ女の子。
「誤解だよ! 私は何もしてない!!」
「何もしてないだ!? じゃあ、さっきのは何なのよ!!」
さっきのとは、あの耳打ちしていた行為なのか。それはこっちも聞きたい事だ。
そう思ってまた鮮明に蘇った声、そうして、また熱が帯びていく。
「あー何その顔!! あんた何処の国の女!? それに……変な服着ちゃってさ」
私の全身を目を細め、変なものでも見るような目つきに変わり噴出し笑い始める。
「これはっ学校の制服で」
「はぁ~? セイフク?? 意味分からなーい。そーんな変な服着て外に出るなんてよく平気ね」
「私の世界じゃ普通なんです。それよりあなたはアディルさんとはどういう関係? 妹?」
「いっ妹じゃない!! シェリーは……シェリーはアディルのお嫁さんになる事が決まってるんだから」
語尾に差し掛かると、うっとりとした表情で両手の指を絡め握り言う。実際には目に見えないけれど、漫画やアニメで言うならば、彼女の周りには花が咲いているんだと思う。
「あなたいくつ? 歳が離れてるように思うん――」
「歳なんて関係なーい! 私達は結ばれる運命なの!!」
私の言葉を遮ってぐいっと距離を縮め、低い身長の彼女は精一杯背伸びをしながら私に顔を近づけてくる。
「とにかくっアディルにこれ以上近づかないでよね!! いい!? 分かった!?」
そう目の前で甲高い声で言い放たれたものだから、耳鳴がおきてしまい顔を顰める。その間に、彼女はフンッと鼻を鳴らして、私から距離を取り1人お城へ大股で向かう。
「ちょっと待って! あの……部屋まで案内してくれないかな?」
アディルさんの頼まれ事だから、彼女はきっと付き添ってくれると思って傍に駆け寄る。彼女は振り向き様に眉間いっぱいに濃い皺を刻んで、舌を出した。そして、屈んだかと思えば空高く飛び上がり、あっという間にお城の3階部分のバルコニーへと飛び乗ってしまう。
あまりに突然の行動と脚力に呆然としている私をバルコニーから見下ろす女の子は、もう一度舌を出し見せてお城の中へと姿を消した――。