微糖恋愛
「そっか。気をつけて帰れよな。」
大きな手でぽんぽんと、ゆつかの頭を撫でれば軽く微笑んでから、ゆつかの顎を指先で持ち上げて深めのキスを落とした。
ゆつかはうなずくと、微笑み返した。
「唯人こそ、あたしの存在が由加里さんにばれないように気をつけてね。」
それだけ言うと、静かに扉を閉めて唯人の部屋をあとにした。
さっきのせりふは子供だったな。
帰り道、ゆつかは大きく後悔した。
由加里さんに嫉妬したこともろばれ。
もっと大人にならなきゃ。
そうしなきゃ、いつまでも由加里さんには勝てない。
まあ、勝てるとも思ってないけど。
由加里さんがどんなひとか知らないし。
彼の前では精一杯背伸びする小さな浮気相手の正体は高校1年生。
―――これがあたしのいびつな恋愛のかたち。