アリスのお兄様
「いってきます。」
「いってらっしゃい。お前ら、しっかり玲を守れよ。」
「任せろ慎。」
毎朝、慎くんは壁にもたれながらもあたしたちを見送ってくれる。
あたしと朔と透の高校は、家の最寄り駅から1つ先の駅。
杏ちゃんの大学はさらにその3つ先の駅になる。
住宅街を通り抜け、駅まで行くには約15分。
あたしの隣で朔は欠伸をしている。
「朔くん、欠伸するくらないならそこ譲れよ。」
「無理。」
「玲ちゃんは俺の隣がいいんじゃないかな。」
後ろからぐいと腕を引かれ、頭上にはにっこりと笑った杏ちゃんがいた。
「痛い…。」
「あーほらもう駅着いちゃったー。あとちょっとしか一緒にいられないよー。」
泣きそうな声を出し妹に甘える18歳。
端から見たら非常に恥ずかしい光景だ。
「おい杏、離れろよ!」
「お前らは玲とまだまだ一緒にいられるだろ!俺は電車がきたら5分しかないんだよ、5分!」
「杏、ウルトラマンみたい。」
「上手いこと言うなあ朔くん。おっ、電車きたぞ。」
朝のラッシュによりあたしたち4人は密着しながら電車に乗り込む。
目の前には杏ちゃんの胸板。
「意識した?」
わざと耳元で囁かれ、少し高めの声にドキドキが止まらない。