あぁ・・・うちな

それでも逃げようとするうちに、男の人が言う。


「とりあえず名前くらい言えや!」


うっ・・・怖い!



思いっきり腕を振り払って逃げた。


後ろを振り返ることなく一心不乱で走った。



家の近くに来たとき、振り返ってみてもあの男の人の姿は見えへんかった。


それでも、どこかにいてるかもしれへんと思ったうちは急いで家の中に入った。



部屋に入って窓の外を見る。


けど、そこには誰もおらへんかった。




ベットに座って、パタッと後ろに倒れる。


目に映るのは朝の景色と同じ。

そこにはただ天井があるだけ。


まだ息が整ってない中、うちはまた手を伸ばす。



「実奈子?どうかしたん?」


そこに母さんが来て、すぐに手を引っ込めた。


首を横に振ると「そう。おかえり」と言って部屋を出て行った。



息が落ち着いてきて、座りなおす。


宿題せなあかん。



鞄を開けて今日の分の宿題に取り掛かる。


今日は、数学と英語と物理。


毎日毎日こんなに宿題出してくれるんを喜んでるんは、多分この世にうちくらいや。



宿題を黙々と進めていった。


わからへんところもあったけど、そこはノートを見たり教科書を見たりすればわかる。

なんでみんなはノートとか見ぃへんのやろ。


簡単に解決したり、終わったりするのに。


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