あぁ・・・うちな

そう心の中で決めて、歩き出すうち。


あの棚に近づくにつれて、鼓動が早くなっていく。



できれば、会いたないんやけどな・・・と思って覗いてみると―――



「なにやってるん?」


後ろから声がして、振り返るとそこにはあの男の人がいてた。


会ってもうたし!

そっと頭を下げて、その場を離れようとするも、あっさり捕まる腕。


今日は、逃げられそうにない。



「あのな、逃げんといてや。俺、そんなにあかん?」


言ってる意味が分からへんけども、怖い以外に何があるて言うねん!



腕を振り払おうにも、今回はがっちり捕まってもうたうち。


ハァ・・・と息を漏らすと「観念したか?」て言うてる男の人。


観念も何も、逃げたいのに逃げられへんのやもん。



「ちょっと、あっち行って座ろうや。今日は話聞くまで帰さへんからな。」


やっぱりヤンキーやって!

思いっきりうちを脅してるとしか思われへん。


図書館の中やし、あんまり大きい声で話してないせいで周りの人はうちのこの窮地に気付いてへん。


そうこうしてる間に、男の人はうちの腕を引いてテーブルのある方へ連れて行く。


もう嫌や、帰りたい。



「ここ、座りぃや。」


ここで逃げることはできる。

けど、そのあとが恐ろしいと思て逃げられへん。


仕方なく椅子に座り、テーブルを挟んだ向かいに男の人が座る。



「で、この前はなんで何も言わへんと逃げたんや。」


「・・・・・・」


いや、それは話せば長くなるんやって。


< 22 / 114 >

この作品をシェア

pagetop