あぁ・・・うちな
「で、名前!言えや。」
「・・・・・・」
言えません!と目で訴えてみるけど、そんなんわかってもらえへんわな。
「なんでそこまで何も言わへんねん。名前言うくらいえぇやん。」
少しあきれ気味に言う、えっと・・・名前・・・あ、勝利さんは机に伏せた。
その隙に、と思ったもののすぐに「おい」って言われた。
「逃げんといて。俺、悪者みたいに見えるやん。」
いや、完璧悪者やろ!
椅子に座るうちを見て勝利さんはまたため息をつく。
「なんか言うてぇや・・・」
なんとなしにガッカリしてるように見えた。
はぁ、めんどくさいんはこっちやっていうのに。
このまま帰れへんのも困るし、しゃぁない、か。
うちは鞄の中からノートを取り出す。
その光景を目の前の勝利さんが見ていた。
頭の上をハテナがとんでいるのも一緒に見えた。
そりゃそうやろうね。
シャーペンでそのノートに言葉をつづる。
『名前は秋野美奈子です。帰っていいですか?』
こう書かれたノートを見た勝利さんは小さく「は?」って言うた。
もう、帰してくれてもえぇやん!
「なんでんなこと、書く必要あんねや?」
「・・・・・・」
これ以上は聞かないでほしい、って書いて見せた。
「なんでや」
うちはノートを閉めて、鞄にしまって立ち上がった。