あぁ・・・うちな
道に出て、タクシーを拾う。
『お客さん!そっちの人は』
『えぇから!はよぉ、病院っ!』
この時のうちは、焦ってて救急車なんか頭に無かったんや。
うち、バカやから。
数分後、病院についてすぐに集中治療室へ運ばれた幸太。
そして・・・
『ご家族の方ですか?』
『幸太は!?』
『・・・意識は戻ってません。危険な状態です。』
うちはただ突っ立ったまま何も言われへんかった。
先生の言っとる意味が分からへんかった。
幸太のいる病室へ入る。
幸太はそこで寝とった。
『幸太・・・?』
もちろん幸太からの返事はない。
ましてや目を覚ますなんてありえへん。
『なんで、あの時来たんよ・・・。来ても、すぐに帰ったらよかったんや・・・。うちが、ただうちが死んでただけやったかもしれへんのにっ。』
こんなことをいくら言うても幸太は目を開かへん。
そっと幸太の手を握る。
まだその手は温かかった。
大好きやった幸太の手やった。
うちの頬を冷たい何かが流れ落ちていく。
今までうちは泣いたことなんかなかった。
涙なんて知らへんかった。
けど、この時初めて涙というものを知った。