あぁ・・・うちな

周りにいた人の視線が痛い。


急いで今雪崩のように落ちた資料やら教科書やらを鞄に戻す。



そのとき横からスッと手が伸びてきて、うちの教科書を拾ってくれた。


その人は、先に歩いて行ってもうたと思ってた勝利やった。


うちが目をパチパチさせてると「なに?」って言われた。



なに?、はうちの方やし。


なんで帰ってきたんよ。



「実奈子、帰るなら早よ言えや。待ったるのに。」


え、待つ?誰を?


うちを?



「よし」って言うて立ち上がる勝利。


うちも立ち上がって、ノートに文字を書く。



それを覗き込んでくる勝利。


「なんや?えっと・・・なんで、早く言うたら、待つの、て?まぁ、帰るんやったら一緒にて思っただけやって。」


『なんで一緒に帰るん?』て書いたら「こんな時間にカヨワイ、女の子を歩かせたらあかんやろ?」て笑いながら言われた。



絶対そんなこと思ってへんでしょ。


「で、帰るで。」


今度は先に歩かずに待ってくれる勝利。


ホンマに待ってくれるんや。


うちが歩き出すと、もちろん勝利も歩き出す。



帰り道も、どうやら途中までは同じらしい。


「実奈子んちって、こっち方向なん?」


うちはノートを出すわけにいかず、ケータイの目も画面で返事をする。


『そうやけど。』


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