あぁ・・・うちな
すると、握っていた幸太の手が少し動いたような気がした。
顔をあげて、幸太の名前を呼ぶうち。
『幸太!起きて、幸太っ!!』
ピクッと動いた手。
分かってる、幸太はうちの声が分かってる。
『幸太!』
『・・・み・・・な・・・』
『そうや、実奈子や!』
『か、えろ・・・や・・・。』
『幸太、なんであそこに来たんよ。来ぉへんかたらこんなことになれへんかったのにっ。バカ、幸太!』
『バカ、か・・・そ、うや、な・・・』
『バカや!幸太はバカや!』
止まることなく流れる雫たち。
幸太の寝ているベッドに水玉模様を作って行く。
『み、なこ・・・は、アホ、や。』
幸太が少しふざけ気味に言った。
うちが、アホ?
ちゃうよ、うちもバカやったんや。
『みな、こ・・・』
幸太の目から一粒の涙が流れた。
そして・・・―――
ピ―――――――ッ
時間が、止まった瞬間やった。
幸太の頬を流れ落ちて行くその涙だけが動いていた。