あぁ・・・うちな
「最近て、まじ!?すごいな。先生結婚してたんやな。意外や・・・。」
「意外ってな。赤木調子にのんなよ!」
「のってませんて。って・・・あ!」
勝利が急に声を張って「ヤバい!」って言いだした。
「実奈子、帰らな親が心配するよな!?」
え、あ、そ、そうやね。
それで、家に帰ろうって・・・なってたんやけど。
「悪い!帰ろか。」
「秋野、どうかしたか?」
帰ろう、帰らなかあかんやん。
でも、足が動かへん。
なんで?なんでや、動いてや。
もう、見たないやろ?
先生のこんなにも幸せそうな姿を、これ以上見たないはずやのに、足が動かへんかった。
「実奈子?」
心配そうに勝利がうちの顔を覗きこむ。
それでも、うちは今にも溢れそうな涙をこらえるのに必死やった。
こんなに辛いのに、この場にいるのが苦しいのに動かれへん。
「・・・帰るで?」
「赤木、秋野を家まで送ってやれ。この時間だしこの状態だからな。」
「あ・・・はい。」
うちは先生の方を見た。
先生も、うちの視線に気づいて「ん?」って首をかしげる。
先生にはうちのこの気持ち、わからへんよね?