あぁ・・・うちな

ヤンキーやった時の自分が一瞬だけ戻ってもうた瞬間やった。



それからは、勝利に家まで送ってもろた。


その間は二人の間に変な空気が漂ってた。



「実奈子。また図書館でな!明日も勉強せなあかんやん。」


家に着くとすぐに、勝利がうちに向かって満面の笑みで対応してくれた。

うちはケータイを持ったままで打とうとはせぇへんかったけど。



今はもう何も考えられへんかった。

頭の中は真っ白やった。


「実奈子ー。起きてるかー?立ったまま寝んといてやー?」



今はそんなこと言われても何も言い返せへん。


どうでもよかったんや。



「み、な、こ!声は聞こえてるんやろ?」


勝利の方を見ると不安そうな顔でうちを見ていた。



声は、聞こえてるよ。


でも、言われへん。


「・・・はぁ。なんやねん・・・。」



勝利が小声でつぶやいたその言葉は、なぜかうちの心に響いてきた。


「実奈子。今日はちゃんと寝なあかんで。俺、帰るな。」



勝利が後ろを向いて帰っていく。


なんでやろう・・・。




その背中が何かを言いたげで・・・とても悲しい背中に見えた。


『勝利!』そう叫びたいのに、叫べへん。




『ここまで送ってくれてありがとう』て言いたいのに言われへん。


あれもこれも、すべては・・・うちの声がでぇへんからあかんねん・・・。


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