あぁ・・・うちな

幸太が、幸太がうちの声を持って行ってもうたから。



むずかゆくて、どうしたらえぇのかわからずに、うちは家の中に入った。






次の日の放課後。


先生に呼ばれて職員室へ足を運んだ。




ホントは今日は学校へ来たくなかった。


でも、今日行かへんかったらこれからも行かれへんやろうなって思って、重たい足を引きずってきた。


進路の時間は、今日は特に話をすることがないからって呼ばれへんかった。



きっと先生も気ぃ遣ってくれてるんやと思った。

昨日うちが最後にあんな態度やったから。



その理由は知らへんと思うけど。



でも、結局放課後に呼ばれた。



職員室へ着くと、先生がうちに気付いて手招きをした。


先生のところへ行くと「ちょっとこっち」て言われて職員室の奥の部屋へ連れられた。



「秋野。昨日はあの後ちゃんと帰れたか?」


うちは紙とペンを渡されて、それに書いていく。


『はい。』


「そうか。・・・その、な。昨日真里亜、って俺の奥さんが帰りに言ってたんだけどな。」


奥さん、ですか。


結婚してるんやもんね。


「俺、昔から人付き合いが悪くてな。今の奥さんが俺の初恋の相手なんだ。」


先生が顔をほころばせながら話していく。


先生、その幸せそうな顔がうちを苦しめてるんやって、気づいてください・・・。



「だから俺、鈍感なんだよな。その・・・恋愛事情とかってやつとか?」


< 44 / 114 >

この作品をシェア

pagetop