あぁ・・・うちな
幸太が、幸太がうちの声を持って行ってもうたから。
むずかゆくて、どうしたらえぇのかわからずに、うちは家の中に入った。
次の日の放課後。
先生に呼ばれて職員室へ足を運んだ。
ホントは今日は学校へ来たくなかった。
でも、今日行かへんかったらこれからも行かれへんやろうなって思って、重たい足を引きずってきた。
進路の時間は、今日は特に話をすることがないからって呼ばれへんかった。
きっと先生も気ぃ遣ってくれてるんやと思った。
昨日うちが最後にあんな態度やったから。
その理由は知らへんと思うけど。
でも、結局放課後に呼ばれた。
職員室へ着くと、先生がうちに気付いて手招きをした。
先生のところへ行くと「ちょっとこっち」て言われて職員室の奥の部屋へ連れられた。
「秋野。昨日はあの後ちゃんと帰れたか?」
うちは紙とペンを渡されて、それに書いていく。
『はい。』
「そうか。・・・その、な。昨日真里亜、って俺の奥さんが帰りに言ってたんだけどな。」
奥さん、ですか。
結婚してるんやもんね。
「俺、昔から人付き合いが悪くてな。今の奥さんが俺の初恋の相手なんだ。」
先生が顔をほころばせながら話していく。
先生、その幸せそうな顔がうちを苦しめてるんやって、気づいてください・・・。
「だから俺、鈍感なんだよな。その・・・恋愛事情とかってやつとか?」