あぁ・・・うちな
勝利はそのノートを見終わって、うちに目を向けた。
そして、一言・・・うちの胸に突き刺した。
「・・・もう話しかけんといて。約束やん。」
え、約束?
なんのこと?
話しかけんといてって、なんでなん?
うちの右手に持ってたシャーペンが滑り落ちた。
勝利はまた自分の世界に戻って行った。
さっきうちに向けられたその目は、どこか寂しげで元気がなかった。
いや、光がなかった。
うちは落としたシャーペンを拾い上げて『どないしたん?』って書いた。
それをまた勝利の目の前に持っていく。
けど「邪魔やから。早よ帰って」ってそっけなく言われて終わった。
うちの胸に刺さった、その言葉の矢は抜けることなくどんどん奥に刺さっていく。
『勝利、なんで怒ってるん?うち、なんかしてもうた?』
「・・・・・・」
『なんか言うてくれへんと、わからん』
「・・・・・・」
とうとうなんも言わへんくなってもうた勝利。
時間は八時を迎えようとしてた。
うちは最後に『ごめん』って書いて勝利に見せた。
そのとき、一瞬だけシャーペンを動かしてた勝利の右手が止まったのがわかった。
でもうちは、また何か言われるんが怖くて、図書館を出た。