あぁ・・・うちな
図書館を出ると、曇り空のせいかいつもよりも余計に暗く感じた。
「おぉ、寒いし暗いなぁ。」
季節も冬になりそうで、寒い寒い。
「手、繫いで帰るか。」
「っ!」
うちは勝利の手に自分の手を重ねた。
ほんのり温かい勝利の手がメッチャ気持ちいい。
二人でこうやって並んで帰る時間は、うちの至福の時間。
学校では会わへんし、この時間だけは大事な時間。
学校でも会ったらえぇのに「クラスの連中にワヤワヤ言われるのめんどい」て理由で会われへん。
うち的には、かなり残念。
でも、そういうことなら、とちょっと我慢。
まぁ、全然会われへん訳やないし、あんまりわがまま言うても迷惑かけるばっかりやから。
「・・・実奈子」
急にトーンの低い声が耳に届いて、歩いていた足が止まる。
首をかしげてみると、勝利は何も言わへんまま一点を見つめてた。
まさか、この日で幸せが崩れていくなんて思ってへんかった―――。
勝利が見つめるその先にいた人物たち。
うちは目を見開いた。
それと同時に、足が、肩が体が震えはじめた。
「実奈子・・・。」