あぁ・・・うちな

勝利が心配そうにうちの顔を覗きこんでくる。


勝利はわかってる。



元ヤンやから。



うちと同じで、そういう過去がある人は、あの人たちを知らへん訳ない。


そいつらはこっちに向かってくる。


きっと、勝利に気付いて。


「実奈子は先に帰っとき。今の実奈子やったら普通に帰れる。雰囲気変わりすぎてるしな。」


勝利はうちの手を放して、帰るように促す。



でもうちは帰られへんかった。


足が、足が動かへんくて。



「実奈子。おい、実奈子。」


「・・・っ」



なぁ、勝利。



うち、もう一つ気づいてもうた。




あの中に、幸太を殺した奴が、いてる―――。





「くっそ・・・」


隣で完全に戸惑ってる勝利。


原因はうち。



うちがこのまますぐに帰ればよかった。


でも、動けへんうちはただ震えることしかできへんかった。



そして・・・運命のカウントダウンが始まった。




「勝利やん。なに、そのかっこう。」


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