”さよなら”なんて言えなくて
始まりの時




青空の下。

舞い落ちる桜の花びら。

広げた手のひらに一枚の花びらがそっと降ってくる。

  




『ねぇ。信五。


あの頃のうちらは笑ってたやろか?


ちゃんと愛せてた?うちは約束を守れてたん?


今はそんなことばかり考えるんや。




あの時ああしてたら?


この時こうしてたら?




そんなことばかり。笑っちゃうやろ。




やけどな。


最近。信五のことが思いだせなくなる。





どんなふうに笑ってたか?


どんな手やったか?


どんな口癖やったか?





そのたびに悲しくなるねん。


彼方が離れていくようで。』








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