”さよなら”なんて言えなくて





嫌味なくらいの青空。
生ぬるい風が吹き抜ける。
ベンチに座り泣き続ける蒼。
ただ黙って蒼の隣に座るすばる。





過ぎていく時間。
慌しく音が溢れているはずなのに
響き渡るのは蒼の嗚咽だけ。



「泣くなや。信五が言うてた通り今、一番泣きたいのはあいつや。」



蒼の肩を抱き寄せる。


「…す…ばる。」

涙で濡れた顔をあげる。


「泣いてても何も始まらひん。そうやろう?」


何かを決意したような強い口調。




「…や…けど。うちには何が出来る?信五のために何がしてあげられるん?」



涙を拭いすばるを見る。


「お前は笑ってればええ。今まで通りのお前でええねん。」

「出来るかな?今まで通りなんて出来ひんよ。」


再びうつむく蒼。



「そんな弱気でどうするねん。俺等が弱気でどうするねん。」

力強いすばるの口調。
   



「…し…信五…大丈夫やろう?死んだり…。」



赤く腫上がった瞳ですばるを見る。
 

「縁起でもないこと言うなや。信五は大丈夫や。大丈夫。」


自分に言い聞かせるように蒼に語りかけるすばる。





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