”さよなら”なんて言えなくて
雲1つない空。
立っているだけでも汗が滲み出る。
タオルとペットボトルを片手にサッカーの練習を見つめる。
「信五。」
信五に向かい手を振る蒼。
くしゃくしゃな顔で無邪気に笑う。
「水。水。」
服で汗を拭いながら蒼からペットボトルを受け取ると蓋を空け一気に飲む。
「ほら。汗ふかな風邪ひくで。」
持っているタオルで信五の顔を拭く。
「あ~。自分で拭くわ。」
恥ずかしそうに蒼の手を振り払う。
「奥さんも大変やな。こんなに世話の焼ける旦那もって。」
信五の横で水を飲んでいたすばるが口をはさむ。
「誰が奥さんやねん。変な呼び名やめて言うてるやろう。」
すばるの肩を軽くどつく蒼。