”さよなら”なんて言えなくて
風に揺られているカーテン。
花瓶に花を活けながら歌を口ずさむ蒼。
その横で布団に包まりながらソッポを向く信五の姿。
「黙ってないで何とか言うてや。そんなにうちのこと嫌なん?」
信五の背中に問いかける。
「…。」
布団を握り締めたまま不貞寝をする信五。
「嫌なら嫌って。帰ってほしいなら帰れって言われるほうが無視されるよりもマシや。」
刺々しく感情をぶつける蒼。
切なそうに信五の背中を見つめる。
「分かった。もう帰るから。」
鞄からノートを取り出すと信五にむかって投げつける。
「何するねん。」
思わず声を上げる信五を横目に足早に病室を後にする。