”さよなら”なんて言えなくて
「すばるの場合は裕と精神年齢が一緒やねん。しゃあないやろ。」
じゃれ合う二人を見つめ微笑む蒼。
「蒼。そういうこと言いますか?」
裕の身体を抑えていた手が緩むとすばるに一発キックをし逃げていく裕。
「イッ。裕。」
振り向くと離れた所で舌を出して笑っている裕の姿。
「忘れもんや。」
ボールを拾い上げると裕へと投げる。
「気ぃつけて帰れよ。」
ボールを受け取ると手を振って帰っていく裕。
「あいつマジで蹴りやがった。」
蒼の横で腰を下ろし蹴られて膝を擦る。
「ありえひんやろう?これ?」
薄っすらと赤くなっている膝。
「いつも意地悪ばっかしてるからやで。」
苦笑いをこぼす。
「今日、信五のとこ行ったんやろ?」
自分の膝から蒼へと目をむける。
「行ったで。口を利くどころか見てもくれひんかったけどな。」
すばるから目を逸らす蒼。
「ムカついたからノート投げつけて帰ってきてん。」
気持ちとは反対の強がりの言葉。
「それでも明日も行くんやろう?」
「行くで。試合の後にな。」
作り笑いをこぼす。
「試合なんてええよ。信五のとこ行って来いや。」
「そんなことしたら余計、信五に口利いてもらえひん。前みたいに笑って蒼って呼んで欲しいから。」
涙目。
必死に涙を堪える。
「無理するなや。俺の前では泣けばええ。」
蒼の肩を抱き寄せるすばる。
「信五と約束したんや。」
すばるから身体を離す。
「約束?」
心配そうに蒼を見つめる。
「強くなるって。」
涙目で必死に作り笑いをこぼす蒼。
「そうか。」
その蒼の姿が眩しく見える。