”さよなら”なんて言えなくて
繋いだ手
扉の前で深呼吸する蒼。
頬を軽く叩き気合を入れる。
トントン。
扉を二回ノックすると扉を開ける。
「信五。相変わらず返事くらいしてや。」
明るい声でベッドへとめを向ける。
そこには信五の姿はない。
「信五君やったら今検査中やで。」
通りかかった看護師が声をかける。
「そうですか。ありがとうございます。」
頭を下げる蒼。
机の上に置かれたノート。
窓際に座り込みノートを開く。
『僕も強くなるから。』
大きく汚い字だが信五らしく力強い字。
「信五…。」
溢れ出る涙を堪えながらノートをギュッと抱きしめる蒼。
「うちも…強くんるから…。」
涙を拭う蒼。