”さよなら”なんて言えなくて
夜風が冷たく感じる。
薄暗い道を微妙な距離をあけ歩く信五と蒼。
ズカズカと歩く信五の後ろを必死に歩く蒼。
「ねぇ。待ってや。」
信五の手を掴む。
振り向くことなく歩き続ける信五の手を離す。
「もうええ。」
蚊の鳴くような声で呟くとその場で立ち止まる。
「うち。今日、誕生日やねんで。」
信五に向かい叫ぶ。
「知っとる。」
足を止め振り返ると蒼の手を掴み歩き出す。
「黙ってついてきたらええねん。」
転びそうになる蒼を強引に引っ張り歩く。