”さよなら”なんて言えなくて
   





「信五。」



頬を膨らませ怒ったフリをする。
  

「怒るなや。」


頬を突っつく。
   


「怒ってない。」



ソッポを向く。
  

「怒ってるやんか。可愛くないで。」


子供のような悪戯な笑みを浮かべる。
   

「可愛くなくさせてるんは信五やろ。」


信五の頬を引っ張る蒼。
  


「痛いわ。今日の蒼はご機嫌斜めやね。」



頬に手をあてる信五。
ソッポを向いたまま信五を見ようとしない。
  

「蒼。」


返事をしない蒼。
 


「蒼。」



甘えた声で蒼の名を呼ぶ。
   


「可愛くないで。」



冷たく言い返す。
  


「やっと口利いたわ。なぁ。目瞑って口あけてや。」
   


「何なん?」
  
「ええから。はよう。」


信五に促されるように目を閉じ口を開ける。
  


「これで仲直りやで。」



蒼の口にミルク飴を放りこむ。
   


「うちは子供やない。」
  
「やけど機嫌なおったやろう?」


嬉しそうに笑う信五に頷き微笑む蒼。








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