”さよなら”なんて言えなくて





窓から差し込む光。
カーテンを揺らす風。
花瓶に花を活ける蒼。
  

「入院するって聞いてほんまに驚いたんやで。」


近くの椅子に腰を下ろす。
   

「ごめん。ごめん。たいしたことあらひんって。ただの検査入院やって。」


ベッドの上 明るく振舞う信五。
   


「何でもないとええけどな。」

心配そうに信五をみる。
   

「大丈夫やって。」


不意をつき蒼の唇へと唇を重ねる信五。
   



「ちょっとここは病院や。」

頬を赤く染め睨みつける。

   
「ええやん。誰もおらひんのやし。」


蒼を抱き寄せる。
その手にギュッと力が入る。
   


「信五?どうしたん?」



信五の様子の異変に気づき声をかける蒼。
   

「何もないで。」


蒼から身体を離すとニコりと微笑む。
   

「ほんまに?」


不安そうに信五を見つめる。
   

「そんな顔すんなや。」


蒼の頬を軽く掴む。
   

「何するん?」


信五の手首を掴む。
   

「いや。相変わらず肉付きがええなぁって。」
   
「何やって?どの口が言うてるん。」


信五の頬を掴み返す蒼。







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